ようこそ鞆へ! 遊ぼうよパラダイス

広島県福山市の南部にある、海岸沿いの小さな町「鞆の浦」。
江戸時代から明治・大正・昭和の建物が自然な姿で混在する街並みは、景観保存条例などによって人工的に残された町とは違った、
おだやかに時間が止まったような感覚をもたらしてくれます。
観光地として知られるこの町のもう一つの魅力は、道端で魚を売るおばあちゃんの姿や人知れず日々量産し続けられる「おかんアート」など、
「観光」の裏側で毎日進行している人々の日常の暮らしの中にあります。
私たちは、自分たちの日常を見つめることはなかなかないものですが、ひとたび立ち止まって身のまわりを見てみると、
密かではあるけれど創意に満ちた営みがあちらこちらにひそんでいることに気づくことができます。
私たちの考えや行動のあり方を律し、その「生」を成立させる常識などのような世の枠組みを疑うことで、それを更新していこうとする創造力は、
私たちがより自由に生きていくうえで、このうえなく重要なものでしょう。
そこで本展では、それが「美術」作品とみなされうるか否かには関係なく、私たちが日常的に採用している価値体系に対して問いを投げかけているような表現を一堂に集め、
展示します。ご紹介するのは、知的障がい者による「設計図」や、アマチュア制作者の手芸品、
美術作家による相対主義的視点から日常のあり方を問い返す作品など、様々な人たちの活動から生み出されてきた多種多様な表現です。
「パラダイス」とは、私たちが想像的につくりだした「この世ならざる」理想的な場所のことであると考えるならば、
そこでは人々の間で価値をめぐる現世的な争いが起きることはなく、幸福な共存があるのみでしょう。
本展では、雑多な価値観を体現している表現を共存させることで、そのような、互いに異なるもの同士が肯定される「この世ならざる」場所の創造へ向けた実験を試みています。
このような場所を経験することにより、自明であったはずの価値観がゆらめき、日常が不思議で驚きの対象として立ち現れてくることでしょう。
本展を通じて、当然となっている日常や見慣れた生活風景が改めて見つめ直され、一人ひとりが自らの日常について考える契機となることを願います。

2013.8/17(sat) -10/20(sun)

【展覧会名】ようこそ鞆へ! 遊ぼうよパラダイス
【会期】2013年8月17日(土) 〜 10月20日(日)
【会場】鞆の津ミュージアム
〒720-0201 広島県福山市鞆町鞆271-1
TEL:084-970-5380 FAX:084-970-5381 info@abtm.jp
【開館時間】午前10時〜午後5時
【休館日】月曜日(祝祭日は開館し、翌日休館)
【観覧料金】一般 500円、小学生以下・障がいのある方 無料
【主催】鞆の津ミュージアム
【特別協賛】アサヒビール株式会社
【助成】公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団 財団法人義倉
【協力】認定こども園 鞆こども園、福山市鞆の浦歴史民俗資料館
【後援】広島県 広島県教育委員会、福山市 福山市教育委員会
【関連企画】「鞆の浦 de ART ツナガル。」 2013年9月29日(日)〜10月19日(土)
福山市鞆の浦一円 http://art.bingo-web.net/

下 清

「日本のゴッホ」「放浪の天才画家」と称され、日本の原風景を描いた貼り絵作品などは、今なお多くの人々に愛されている。本展では、山下清が鞆の浦を描いたフェルトペンによる絵画を展示。

川 敏之

「2000年後から見た現代」をテーマに、私たちの身の回りにあるごく普通の携帯電話や招き猫などを化石化し、"現在"とは何かを問いかける作品を作り続けている。本展では、鞆の浦に残る思い出の品とのコラボレーションを試みる。
http://www.planetstudio41.com/

タロ

広島市の市営基町アパート1階にあるショッピングセンターで、毎朝4時から30年間専属清掃員として勤務。清掃の仕事が一段落すると、拾ってきたクレヨンや鉛筆で絵を描き始める。描くのは、友人のホームレスや掃除道具など人から注目されることのないものたち。

井 柊輔

テレビアニメに興味があり、色々なキャラクターや声優が登場する架空の物語を作って楽しんでいる。近年は、他界した祖父(大城巧)へのオマージュとして、突然お墓や年表を身近な素材を利用して作り始めている。

頭 一則

昨年、福山市鞆町の秋祭りで、町内の人たちに喜んでもらうため、中学校の授業以来、半世紀ぶりに絵を描き始める。仕事の合間をぬって、週刊誌や新聞の小さな切り抜きを見ながら、スターの絵を描き続けている。

本 敬

自称・特殊漫画家。「因果者」「イイ顔」「電波系」「ゴミ屋敷」などといったキーワードを作り出し、悪趣味系のサブカルチャーへ与えた影響は大きい。本展では、これまでのフィールドワークで出会った事物を紹介した根本ワールドを展開。
http://www011.upp.so-net.ne.jp/TOKUSYUMANGA/

名 勝己

広島県尾道市にあるビザールな酒屋「ひめじや」店主。多量のペットボトルやガラクタを駆使し、道路を挟んだ両方の酒屋の一階部分の壁を埋め尽くしている。年々デコレーションは過剰になり、本展ではミュージアム館内で制作予定。

川 定之

広島市の福祉施設で暮らす。四畳半の居室で、ベッドとテレビの間のわずかな隙間に画板を敷き、薄っぺらい紙の上にボールペンを走らせ、孤独で壮大な設計図を描き続けている。描いた後は自ら処分することもあり、何十年にも及ぶ作品はほとんど現存していない。

川 尚也

小学4年生ごろから、コピー用紙などを使って好きなアニメのキャラクターの紙人形を作っている。ほとんどの紙人形は全裸にすることが可能で、細部に至るまで精巧に再現している。これまでに1000体以上を制作している。

本 恵

寿司屋バイトとカメラマン業に勤しみながら、生まれ育った街・大阪に溢れる・かまへん(構わない)風情・をスナップした写真作品群「大阪式」を継続発表中。本展では、鞆の浦を拠点に街にあふれる事物を独自の視点で切り取ってゆく。

西山 友浩

左に重心がかかり縦横無尽に引かれた線のように見えるが、これは日々の出来事を綴った日記である。書いた瞬間に本人が切り刻んで処分しているため過去10年ほどの日記は現存していない。

塚 チエ子・原 キクヨ

鞆の浦を代表するおかんアートの作り手たち。おかんアートとは、主に中高年の主婦(母親=おかん)が余暇を利用して創作する自宅装飾用芸術作品の総称のこと。どんなオシャレな空間も一発で破壊してしまうエネルギーを放つ作品群を一堂に展示する。