凸凹の凹凸〜さわってみるこの世界〜

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凸凹の凹凸 でこぼこおうとつ〜さわってみるこの世界〜

「十人十色」と言われるように、私たちは、様々な色や形をした身体と心をもって生きています。それぞれに異なること。これは、私たちが生きていくうえでまずはじめに肯定されるべき大前提でしょう。しかし、一枚皮膚をめくってみれば、血を循環させ、酸素を交換し、栄養を取り込んで排泄し、子孫をつくったりするための様々な器官や臓器が組み合わされてできた、精妙かつ不思議極まりないひとつの物質的なかたまりでもあることもまた疑いのない事実です。このことは、私たちがみな、基本的には同じ機能や構造を備えた同類でもあるということを意味していることは言うまでもありません。私たちは、違うと同時に同じであり、同じであると同時に違うというあり方をしているのです。

 そのようなそれぞれの個性や違いを知るためには「百聞は一見に如かず」と言われるわけですが、逆に、目に見えるものが私たちを欺くこともあるのは、私たちがよく知っている経験的な事実です。そんな時、触覚が私たちの認識を支えてくれるのではないでしょうか。他のものと同じであっても違っていても、それに触れることができるということは、何かが確かにそこに存在している、ということの証に他ならないからです。

 そこで本展では、「さわる」にまつわる創作物をご紹介致します。視覚に障害のある人でもからだの仕組みが理解できるよう、様々な感触をもった素材の日用品を使って自作された人体解剖模型、レゴ製DNAや手芸的な科学模型、文房具の「試し書き」、身体を包み込む布の中に入って動き回ることでトンネルとなる遊具など。全てではありませんが、本展の出展物は実際に触ったり、直接体験して遊ぶことができるようになっています。みなさま、どうぞお試しあれ。

 目を通じてこの世界のありさまを見るだけでなく、手足や皮膚の感覚を通じて、この世の多様(凸凹)な肌理(凹凸)に触れ、そのかたちを新たな方法で捉えていく機会をつくること。これが本展のねらいです。「十人十色」ならぬ「十人十触」の世界を知る。本展を経験することで、私たちそれぞれがこの世界そして自分自身と新しい関係を結びなおすきっかけとなることを願います

会期:2016年4月30日(土)〜8月14日(日) 10:00 〜 17:00
休館日:月曜・火曜日(ただし、祝日は開館)
主催:社会福祉法人 創樹会 鞆の津ミュージアム
協力: 広島県立広島中央特別支援学校、立教大学理学部共通教育推進室、
   文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域 植物細胞壁の情報処理システム
お問い合わせ:TEL 084-970-5380 FAX 084-970-5381

詳しい展示情報は、鞆の津ミュージアムFacebook(こちら)でご覧いただけます。

出展作家


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寺口 さやか てらぐちさやか
1972年生まれ。
広島県立広島中央特別支援学校高等部理療科主任教諭。
広島市立舟入高校を卒業後、視力の衰えから、広島県立盲学校(現・広島県立広島中央特別支援学校)に入学し、理療科を修了。
平成9年に母校に就職してからは、理療科教諭として、解剖学や臨床医学などを教えている。
本展では、授業内でからだの仕組みを教える際、視覚に障害のある学生が触っても理解できるように、フェルト・綿ひも・マジックテープ・磁石など感触の異なる様々な素材の日用品を使って自作した人体解模型や教材を展示。

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工藤 光子 くどうみつこ

1970年生まれ。
名古屋大学理学研究科生命科学専攻修了。立教大学理学部共通教育推進室 特任准教授。専門は、サイエンスコミュニケーション&プロダクション。
小さい頃からものづくりが好きで、家庭科関係は一通りこなす。最先端の生命科学を言葉ではなく身体を通した感覚で理解したいため、モノを作りながら、考える日々。本展では、工藤監修のもとに制作されたレゴのDNA模型をはじめ、膨大な量のビーズからなる細胞壁模型、フェルト製受精卵など、手芸的手法でつくられた自作の科学模型を展示する。

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安西 央 あんざいまお

1991年生まれ。立教大学理学研究科物理学専攻修了。小さい頃からレゴ好き。中高で封印していたレゴを大学で工藤によってとかれ、家族に眉を顰められる。大学では針金とハンダにはまる。職人に憧れつつも今春からサラリーマンに。日本のものづくりを支える人なる予定!?。

在学中に、工藤監修のもとでレゴを使ってDNA模型を実装した。さらに本展では、安西が針金を使って自作した昆虫の模型も展示する。 

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寺井 広樹 てらいひろき

1980年生まれ。
2007年、世界放浪中にベルギーの文房具店にて「試し書き」に出会い、魅了される。
以後、世界各地で生み出される「試し書き」の蒐集を開始。
現在は、107ヶ国、計20,000点以上の「試し書き」コレクションを所蔵し、著書に『「試し書き」から見えた世界』などがある
本展では、インクの滑らかさ、筆圧や握り具合など書き味を確かめる触覚的な行為の痕跡としての「試し書き」を展示する。

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大崎 晴地 おおさきはるち

1981年生まれ。2014年、東京芸術大学大学院美術研究科博士課程修了。
臨床現場の治療家との研究活動を行いながら、心と身体、発達のリハビリテーション、病理をテーマに作品を制作している。「エアートンネル」(2013)は、児童福祉施設などで発達や療育のための道具としても活用し、新しい体験と行為を通じた創造性を検証している。
また建築家と恊働し、生活空間のなかにバリアを取り入れる「≪障害の家≫(Barrier House Project)」(2015〜)を始動。
撮影:Tada (YUKAI) 「TURNフェス」写真提供アーツカウンシル東京